次世代インフラを見据えたドローンへの投資

ドローンビジネス 栃木県のドローンスクール

ドローンイメージ画像

本校の卒業生や在校生がドローンの何を見据え、資格を取り、どう飛躍していくのかを探る「飛躍の一歩」シリーズ

今回は、前回ご登場いただいた村上頌さんの勤務する、株式会社六洽(りくごう)建設代表取締役で一般社団法人UAVインフラ点検技術研究会理事長を務める髙野(こうの)英也さんにお話しを伺いました。
自他ともに認める「宮っ子」(宇都宮出身の呼称)の髙野さんがドローンで描く構想を、前回同様、本校の三品正樹インストラクター同席のもと紐解いてゆきます。

※UAV=ドローン

株式会社六洽(りくごう)建設

今回の対談相手
株式会社六洽(りくごう)建設 代表取締役
一般社団法人UAVインフラ点検技術研究会理事長
髙野(こうの)英也さん

栃木県宇都宮市がルーツ

髙野さんは1976年に栃木県宇都宮市で生まれました。地元の小、中学校を経て作新学院高等学校に入学すると、毎日、片道約10キロメートルの道のりを自転車で1時間弱かけ通学した経験の持ち主です。
その頃はまだ地元の風景をしみじみ噛みしめるようなことはありませんでしたから、のちに、宇都宮をはじめ栃木県の景観や安全を守る会社を興すことになるとは夢にも思っていなかったようです。

持ち前のガッツを活かし地域貢献のできる建設業界に駒を進めた髙野さん。
慣れない作業で大変なこと、自分の不甲斐なさを痛感することもたびたびあったといいます。それでも理解ある上司や関係者に恵まれ、何かを形に残すこと、残したものをメンテナンスし維持する仕事にやりがいを感じていました。

三品当時はどんな社員だったのですか?

髙野さんこうした方がいいと思ったことは発言することが多かったです。就業後もひとり自宅に戻っては調べものをすることも多々ありました。
今の時代だと働き過ぎだなんて言われてしまうのかもしれませんが、そうではなくて自分がそうしたかったから動いたまで。これはきっと会社やみんなのためになると思ったことを、本当にそうかどうか調べて、考え、伝え、上司に意見を求めました。上司の意見に「なるほど」と納得したこともたくさんあります。そうしてまた考える。そんなことをやってきました。

10年、20年と重なるキャリア。
その間、地域の人々が日常的に使うインフラ点検がより一層重要になる時代に入っていきました。高度経済成長期につくられた橋やトンネルなどの老朽化が深刻さを増してきたのです。

※参考:社会資本の老朽化の現状と将来
我が国の社会資本ストックは高度経済成長期に集中的に整備され、今後急速に老朽化することが懸念されています。今後20年間で、建設後50年以上経過する施設の割合は加速度的に高くなる見込みであり、このように一斉に老朽化するインフラを戦略的に維持管理・更新することが求められています。
国土交通省が2016年に制作した「社会資本の老朽化対策情報ポータルサイト インフラメンテナンス情報」

UAV事業部をいち早く設置

しかし、この時はまだ、メンテナンス点検には人の目視が重要視されていたころ。
もっと効率を上げられたらと考えていた矢先、国土交通省はインフラ点検業務にドローンを取り入れ可能となる規定を発表しました。

これまで培ってきた技術とドローンをかけ合わせ地域を守る決意をした髙野さんは、2019年11月、宇都宮市内に橋梁の補修・補強工事、社会インフラ整備を行う株式会社六洽建設を設立。
UAV事業部を設け、いち早くドローン導入に着手しました。

戦略的インフラマネジメント

三品:UAV事業部を作られた理由はなんですか?

髙野さん設立当初からUAVや3次元処理などの時代が来ると考えており、弊社事業の柱とも言える橋梁補修・補強工事などに役立てられれば、現場サイドの品質確保や施工工程の短縮などにも役立つと思い事業部を立上げました。

三品髙野社長を含むメンバー4人がドローンの国家資格・二等無人航空機操縦士となりました。しかし、現在はまだ、ドローンを飛ばす上で資格取得は必須事項ではありません。会社として資格を取らせるのは経費的な面でも大変だったのではないでしょうか?

髙野さん資格が世間的な補償になるので投資します。 

三品「賢く投資・賢く使う」ですね。ほかにUAV事業部の特徴は?

髙野さん当たり前ですが、ドローンを用いた点検とそれに付随する業務です。現時点で合計4台のドローンを所持しています。
「Skydio 2」を2台。「SkydioX10」を1台。「Dji Matrice 30T」を1台です。
これらを現場や状況に応じて使い分けています。
また、ドローンで撮った画像を処理する3Dモデリングソフトを使用するため、モデリングに必要なグラフィックボードを搭載したハイスペックなパソコンを揃えています。
作業としては、UAV撮影、SFM処理、オルソ画像処理、MP4処理、レーザースキャナ(点群処理)、一眼レフ撮影など多岐にわたります。

三品二等無人航空機操縦士になってもなお、ドローンを飛ばす上で気をつけている点はありますか?

髙野さん事前に飛行空域などの確認を行っておりますが、飛行可能区域での第三者への注意です。安全第一を常に心がけています。

満を持して動き出した六洽建設。UAV事業部も順調に稼働し、那須町の三井橋、白戸橋、下黒尾橋をはじめ、宇都宮市の乙女橋、ほか県内外の橋梁の点検業務をこなしてきました。

ドローン撮影3Dイメージ画像

全国を視野に 栃木県でドローン技術を仲間と共有する一般社団法人を設立

ドローンの国家資格、ドローン機体、ハイスペックPC、ソフトウエア。
次世代インフラに必要な舞台を揃え六洽建設オリジナルの経験値は上がっていっても、ドローンを用いたインフラ点検の歴史が浅いため受注者も発注者も手探りの状態が続いてしまっている…。
髙野さんはこの状況を打破できないか考えるようになりました。 

ある日、ひとつの考えに辿り着きます。「一般社団法人を設立する!」
メリットは次の4つでした。

1、UAVによるインフラ点検の普及活動及び発注者への営業を団体として行う
2、会員間での実績や課題などを会で共有し、PDCAサイクルをまわす 
3、栃木県のUAV点検業務構築をはかり、底上げしていく
4、北関東をはじめ全国の団体との交流、協力を視野に入れる

2024年4月、「一般社団法人UAVインフラ点検技術研究会」が誕生しました。

三品:いろいろな想いが詰まっている一般社団法人ですね。

髙野さん栃木県内にUAVインフラ点検のベースができたらいいなという想いが大きいです。各社UAVを取り入れるにあたって困っていることはさまざまだと思います。機体はあっても「さあどうする?」の段階から、飛行技術やモデリングに難を抱えている場合、あるいは膨大なデータの管理方法、最新情報の共有など…。
たくさんのニーズに応えられるよう勉強会を開催したり、共有したり盛り上げたいですね。最終的には研究会が他県や全国と交流できるようになれたらと思っています。

真岡市の重要文化財「大崎神社」のデジタルデータ化に着手

三品:「一般社団法人UAVインフラ点検技術研究会」の現在は?

髙野さん:会員様を募集しています。日々、試行錯誤しながら得た経験や情報を惜しみなく共有できるよう準備しています。

三品前回のインタビューで、社員の村上さんから「研究会では文化財を守る活動をしている」と伺いました。

髙野さんはい。真岡市にある大前(おおさき)神社(国の重要文化財)を後世に残すためドローンを用い、デジタルデータ化しています。
この取り組みは、今後、文化財が等しくデータ化される今後を予測し、いち早く経験を積んでおきたいという想いから親交のある大前神社様の許可を得て着手しました。
実際に現場に行って分かったこともたくさんあります。
文化財を傷つけずドローンを飛ばすことは絶対ですし、参拝される人を考慮し撮り直しのきかない一回勝負なんてことも状況によって発生します。注意点もわかってきました。 

また、文化財のモデリング画像を動画にしてモニターで流す実験もしています。アニメではなく目で見たままの映像に仕上げているため精度が求められ大変ですが経験値もあがってきました。完成した暁には、展示会で展示したいと思っています!

三品栃木県には主要な文化財がたくさんありますから、文化財のUAV点検も重要な業務になってくるでしょうね。

髙野さん一般社団法人UAVインフラ点検技術研究会が、文化財の点検業務やデジタルデータ化を担っていきたいと考えています。

※参考:大前神社
大前神社の本殿は宝永4年(1707)、拝殿及び幣殿は17世紀末期に、関東各地から技量の優れた大工を招いて建てられた。本殿は、組物の龍彫刻のほか、柱や壁の幾何学意匠の地紋彫など、随所を秀逸かつ先駆的な手法で飾り、関東地方における装飾建築普及の萌芽を示している。拝殿では、正面の向拝まわりで彫刻を多用し、屋根に千鳥破風を飾るなど、華やかな拝所空間を演出している。北関東において庶民信仰を背景に装飾豊かな神社建築が急速に普及する初期段階の様相や、技術、意匠の展開をよく示しており、高い歴史的価値を有している。
文化庁 文化遺産オンラインより抜粋

若い世代からベテランまで集って欲しい

三品今後の目標はありますか?

髙野さんインフラの生産性を向上して、より若い世代からベテランまで希望が持てる会社にすることです。深刻な人口減少の中でも、効率をあげて地域の人びとを守るインフラ点検業務は本当に尊い仕事だと実感しています。
橋梁点検もドローンをはじめICT技術を駆使する時代になりました。ぜひ、我こそはと思う方に飛び込んできてもらいたいです。

ドローンビジネスは走りながら考えるスピード感が大切

三品:今後のドローンビジネスと展望を教えてください。

髙野さん先にも話しが出た通り、ドローンを用いた文化財の保護と継承活動はますます重要になってくるでしょう。
先人が残した文化財をドローン撮影で完璧に記録することは、万が一の際に迅速に復元・対応が可能になります。点検も同様です。
ですがまだまだ「記録の際にドローンが落ちたら…」「不測の事態が起きたら…」とドローンの信用が得られていないのも事実です。
でも、だからこそドローンの国家資格があるのではないかと思っています。
次世代を見据え、早いうちからドローンを活用した文化財保護が確立することを願ってやみません。

栃木県宇都宮市出身の髙野さん。次世代インフラのあり方が問われる中で、ドローンなど投資するべきところに投資し、生産性を高める技術を従業員と模索しながら走り続けています。
「すべては行動」。実直に次世代インフラ化を実現する髙野さんの今後がますます楽しみです。

取材協力
株式会社六洽建設
岡本事業所
一般社団法人UAVインフラ点検技術研究会
〒329-1105 栃木県宇都宮市中岡本町3023-16
TEL:028-612-8701
FAX:028-612-8702

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