ドローンを飛ばすためには、状況によって様々な許可・承認・登録などが必要です。
「ややこしい」と感じる方も多い手続きを、わかりやすく解説します。
今回のコラムでは、空域に関する飛行許可申請について取り上げました。
ドローンの飛行許可申請の解説を始める前に、ドローンの飛行許可と飛行承認など、許可・承認・登録手続きについておさらいしましょう。
ドローンは、購入して飛ばす前に「機体登録」を行って、持ち主と機体を紐づける必要があります。
また、10種類の【特定飛行】を行う場合は、許可・承認をもらうために申請手続きを行います。
10種類の【特定飛行】は、基本的に航空法によって禁じられている行為です。そのため、許可・承認申請を行って、禁止を解除してもらわなければなりません。
10種類の【特定飛行】は、ドローンを飛ばす空域と、ドローンを飛ばす方法に分けられます。
今回解説する飛行許可申請は、ドローンを飛ばす空域に関する手続きです。
ドローンの飛行許可とは?
ドローンの飛行許可申請は、100g以上(バッテリー込み)のドローンを飛ばす場合の、空域に関する申請です。
航空法では10種類の【特定飛行】を定めており、うち4つが飛ばす空域に関する内容です。
航空法で定められた飛行空域
●150m以上の高さの上空
●空港周辺の空域
●人工集中地区(DID地区)の上空
●緊急用務空域
ドローンの飛行許可申請は、地域や人々に危害を及ぼさず、楽しく飛行させるための重要な手続きです。
ドローンの飛行許可-飛ばす空域に関する申請
ドローンを実際に飛ばす場合、飛ばす空域に関する飛行許可申請を行う必要があります。
飛行許可の申請が必要なケースについて詳しく解説します。
【1】飛行許可申請が必要なケース
飛行許可申請は飛ばす空域に関する許可申請ですが、飛ばす地域・エリア管轄団体によって法律が違うため、申請先も異なります。
まず飛行許可申請を行うべきは、航空法にのっとった【特定飛行】における4つの空域です。
規制されている空域が多いため、屋外を飛ばす場合は基本的に申請を行うことがおすすめです。
航空法で定められた飛行空域
●150m以上の高さの上空
●空港周辺の空域
●人工集中地区(DID地区)の上空
●緊急用務空域
150m以上の高さを飛ばす場合は、地上もしくは海上から150m以上になります。
この高さは、人が搭乗している航空機やヘリコプターなどが飛行している恐れがあります。
万一衝突したら、大きな事故につながるため許可が必要です。
また、飛行機が絶えず離発着する空港周辺の空域も、旅客機などにぶつかる危険性があるため、ドローン飛行は原則禁止されています。
人口集中地区(DID地区)は、多くの家が立ち並び、人や自動車などの往来も盛んです。
事故や破片の落下など、危険なリスクをともないます。
緊急用務空域とは、災害や大規模な事故など緊急事態の発生時に指定される飛行禁止区域です。
救助ヘリやドクターヘリが飛び交うため、災害が起きたエリア周辺空域が一時的に緊急用として閉鎖されます。
緊急用務空域は、災害が発生してから国土交通大臣が指定する禁止エリアで、あらかじめ決まっているわけではありません。
当日になって突然飛行禁止になることが多く、事前にニュースなどで十分確認・注意する必要があります。
必要性がある場合にのみ特別に許可が下りることがありますが、緊急用務空域に指定された場合はほぼ飛行禁止です。
【2】その他飛ばす空域により申請が必要になるケース
航空法にのっとった【特定飛行】空域以外で、各所に申請が必要になるケースもあります。
それぞれをわかりやすく解説します。
「小型無人機等飛行禁止法」で定められた地域で飛ばす場合
航空法とは別の、「小型無人機等飛行禁止法」で定められた飛行禁止区域を飛ばす場合も、許可申請が必要です。
「小型無人機等飛行禁止法」で定められているドローンは、航空法と異なり100g未満の機体もすべて含みます。
飛行禁止区域は、以下の施設および周辺300mの地域の上空です。
飛行させる前に、施設のあるエリアの都道府県警や管区海上保安本部などへの通達をしなければなりません。
●国の重要な施設(国会議事堂、首相官邸など)
●皇居、御所
●外国公館
●防衛関連施設
●空港
●原子力事業所
航空法とは異なる法律のため、注意してくださいね。
道路上で離発着を行う場合
道路上でドローンを離発着させる場合は、道路交通法に従ってあらかじめ管轄区域の警察署に届け出なければなりません。
また、ドローンを飛ばすために道路上へ第三者を配置したり、パイロンや看板などを設置する場合も許可が必要です。
飛行禁止区域に指定されていない場所で、道路の上空を飛ばすだけなら申請は不要です。
私有地の上空で飛ばす場合
他人や団体の私有地上空を飛ばす場合も、その土地の所有者や管理者の許可が必要です。
航空法の特定飛行エリアに入っている場合は、両方の許可を得る必要があります。
公園内で飛ばす場合
公園を管轄する法律である「都市公園法」「自然公園法」では、ドローンの飛行に許可は不要です。
しかし、公園の管理者がドローンの飛行を禁止している場合や、許可申請を求めているケースもあるため、事前に管理者へ問い合わせましょう。
海上で飛ばす場合
海上を飛ばす場合、管轄する法律である「港則法」「海上交通安全法」では飛行許可の申請が不要です。
しかし、ドローンの飛行が原因で船舶交通の安全を脅かす恐れがある場合は許可が必要になります。
あらかじめエリアを管轄している海上保安本部に連絡して、許可が必要かどうか確認してください。
河川・海岸で飛ばす場合
河川や河川敷、海岸で飛ばす場合、河川・海岸を管轄する法律である「河川法」「海岸法」では許可申請が不要です。
しかし、河川敷や海岸の管理者や土地の所有者がドローン飛行を禁止していたり、許可申請を求めたりする場合もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
国有林で飛ばす場合
「国有林野の管理経営に関する法律」という法律があり、「入林届」の提出が必要です。
国有林ではない場合は、公園・土地の所有者・管理者に許可を得ましょう。
都道府県・市区町村の条例で定められている場合
その他、都道府県や市区町村の条例でドローンの飛行が制限されている場合は、条例に従います。
【3】許可申請が必要な空域を調べよう
ここまで、ドローンの飛行に許可申請が必要な空域について解説してきました。
しかし、「多すぎてどこなら飛ばせるのかわからない」という方が多数派です。
そこで、ドローンを飛ばすにあたり、許可申請が必要か不要かなどがわかる、便利なツールをご紹介します。
地図サイト
▶︎国土地理院地図
▶︎ドローン専用飛行支援サービス(SoraPass)
▶︎DJIフライトマップ
ドローンの飛行許可申請をしてみよう
それでは、実際にドローンの飛行許可申請の手順を解説します。
最初に飛ばすドローンの機体登録を行うか、借りる機体の持ち主に使用者の登録をしてもらってから、飛行許可申請を行いましょう。
飛行許可申請・包括申請はインターネットで
ドローンの飛行許可申請方法は3種類あります。
●インターネット
●書類郵送
●窓口へ持ち込み
国土交通省が推奨している方法はインターネットで、もっとも早くて簡単です。
ここでも、インターネットを使った申請方法を解説していきます。
ドローンの飛行許可申請の方法は2種類あります。
個別申請と包括申請です。
個別申請
ドローンを1回飛行させるごとに行う申請。飛行の都度申請する必要があり、飛行経路の申請も必要です。
目的は業務・趣味を問いません。
また、すべての特定飛行に対応しています。
有効期限は1年間です。
包括申請
同じ申請者が1年以内に何度も飛行を行う場合に、まとめて行う申請。飛行の都度申請する必要がありません。
何度も飛ばすことを想定しており、飛行経路の申請も不要です。
ただし、目的は業務用に限ります。
また、申請できる飛行条件が限られます。
申請できる飛行
●人工集中地区(DID地区)上空の飛行
●人または物件から30m未満での飛行
●夜間飛行
●目視外飛行
●危険物の輸送(含農薬散布)
●物件投下(含農薬散布)
申請できない飛行
●空港周辺の空域
●イベント会場上空での飛行
●150m以上の高さの上空
●人工集中地区(DID地区)上空の夜間飛行
●人工集中地区(DID地区)上空の夜間の目視外飛行
●補助者を配置しない目視外飛行
有効期限は1年間です。
操縦者は10時間以上の飛行実績を求められます。
飛行許可の申請手順
実際の飛行許可申請手順を説明します。
【事前準備】申請前の確認事項
申請を行う前に注意しておきたい点があります。申請は飛行開始予定日の10開庁日前までにスタートしましょう。
間に土日祝日が入る場合は、2週間前を目安に始めることをおすすめします。
初めてドローンに関する手続きを行う方は、ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)でアカウントを作成しなければなりません。
アカウント作成には
●マイナンバーカード
●運転免許証
●パスポート
●メールアドレス
●スマートフォン
などが必要です。
お持ちのドローンの機体登録を行っていない場合、機体登録もしなければなりません。
機体登録にも1~5開庁日ほど時間がかかるため、事前に登録を済ませておくことをおすすめします。
書類の申請・確認には時間がかかるうえ、不備があった場合はさらに時間がかかります。
また、申請に必要な入力内容をあらかじめ再確認しておきましょう。
●ドローンの機体登録
●飛ばす操縦者の登録
●借りる場合は持ち主による使用者の追加登録依頼
●加入保険情報
●飛行日時
●飛行空域にあたる住所
●関係機関との調整 など
飛行マニュアルを選択する際は、航空局標準マニュアルを選べば独自マニュアルを準備する必要はありません。
ただし、以下の飛行に限られます。
●人工集中地区(DID地区)上空の飛行
●人または物件から30m未満での飛行
●夜間飛行
●目視外飛行
●危険物の輸送(含農薬散布)
●物件投下(含農薬散布)
以上の飛行以外を行う場合は、独自マニュアルを作成し、提出する必要があります。
不備や不明瞭な情報があると、当日申請が完了しなかったり、飛行開始日までに申請がおりない場合があります。
【1】ドローン情報基盤システム2.0(DIPS)にログインする
まずはドローン情報基盤システム2.0、通称DIPSでアカウントを作成します。
すでに持っている方は、ログインしてください。
【2】「操縦者情報の登録・変更」を選択
操縦者情報の登録・変更を選択して、アカウント情報に間違いがないか、使用する機体と紐づけされているかを調べます。
ここで間違いや紐づけのミスに気付かず申請を進めると、最後でやり直しになってしまうため、しっかり確認してください。
【3】新規申請を行う
飛行許可・承認メインメニューに戻って、「飛行許可・承認の申請書を作成する」メニューから新規申請を選択します。
戻る場合は必ず画面内の「次へ」か「戻る」ボタンを操作しましょう。
ブラウザバックすると、申請が途中でストップしてやり直しになる可能性があります。
【4】簡易カテゴリー判定を行う
簡易カテゴリー判断とは、今回申請する飛行がどのレベルか、包括申請が可能か、飛行許可がおりるのかなどを測定するツールです。
5つの質問に答えると、飛行のレベルがわかり、そのまま申請を続けられるレベルであれば、次に進めます。
申請できない飛行
●空港周辺の空域
●イベント会場上空での飛行
●150m以上の高さの上空
●人工集中地区(DID地区)上空の夜間飛行
●人工集中地区(DID地区)上空の夜間の目視外飛行
●補助者を配置しない目視外飛行
以上の選択肢にチェックを入れると、包括申請ができません。
包括申請では飛行空域・方法が限られるため、上記の飛行が必要な場合は個別申請に切り替えましょう。
次に進める場合は、「飛行許可・承認申請へ」というボタンが表示されるため、選択します。
【5】飛行の概要を選択
次は飛行の概要選択メニューに移ります。
業務かそれ以外の趣味などかを選ぶ画面で、業務から目的の項目を選び、チェックを入れてください。
簡易カテゴリー判定でチェックした選択肢が反映されるため、飛行理由の欄はプルダウンで「飛行の目的と同じ」を選択します。
【6】飛行する期間と空域の設定
次に、飛行する期間と空域を設定する画面で、期間・空域の選択をします。
期間は最長の1年間を選択しましょう。
空域は、包括申請では特定しません。
「特定の空域・経路で飛行しない」を選択してから、最大の「日本全国」を選んでください。
【7】申請先を選択
申請先の地方航空局などを選択します。
もし、東京と大阪にまたがる場合は、申請者の住所を管轄する地方航空局を選んでください。
【8】機体の情報を選択・入力
次に進むと、機体の登録情報を選択する画面に遷移します。
今回使用する機体の情報を選び、「機体の追加」を選択してから登録ボタンをクリックしましょう。
機体の性能に合わせて、要求された場合は写真画像もアップします。
本体やプロペラガード、プロポの写真をアップしてください。
プロポは、機体の位置がプロポで確認できるMap画像などを選びます。
【9】操縦者情報を選択・入力
次に、操縦者情報を選択・入力します。
すでに登録されている操縦者の名前からあなたを選び、「操縦者追加」と「登録」を選択しましょう。
【10】使用する飛行マニュアルを選択
次に行くと、使用する飛行マニュアル選択画面になります。
包括申請では航空局標準飛行マニュアル02を選択してください。
【11】保険の入力
新品のDJIドローンには1年間の無償保険がついていますが、別の機種の場合や期間が終わった場合は、任意保険に加入してください。
保険はあくまでも任意ですが、事故を起こした場合は大きな賠償責任を問われる可能性があります。
飛行前に保険に加入すると安心です。
さらに、緊急連絡先も入力しましょう。
【12】申請書の確認
これまでに入力してきたデータが一覧になっているので、申請書をもう一度間違いがないかしっかり確認しましょう。間違えた場合は、申請のやり直しを指示されます。
間違いがなければ「申請書の内容は間違いありませんか?」にチェックを入れ、最後に「登録」を選択すると終了です。
ちなみに、インターネットで申請した場合、飛行許可申請はお金がかかりません。
飛行申請が通らなかった場合は修正して再提出する
飛行許可申請の内容に不備があった場合、登録中や登録後に修正の指示が届きます。
修正はできますが、登録全体に時間がかかってしまうため、事前によく確認・準備をして臨みましょう。
操縦練習は包括申請できるの?
ドローンの包括申請は、飛行目的が業務であることが条件です。
趣味で飛ばす場合は個別申請が必要になってしまいます。
「ドローンの操縦練習は業務ではないし、趣味とも違うし…」と悩む方も多いのですが、包括申請で通したい場合は業務と行うタスク(空撮や自然観測など)を選ぶと良いでしょう。
飛行許可申請は準備と時間の余裕が重要です
飛行許可申請(空域に関わる申請)の、包括申請方法について解説しました。
飛行許可申請は、あらかじめ準備をしておくことと、実際に飛ばす日まで余裕をもって申請をスタートすることが肝要です。
特に、すべての窓口であるドローン情報基盤システム2.0(DIPS)にアカウントを開設しておくことは、時間短縮になります。
また、申請は60分が制限時間です。
事前にアカウントを開設し、機体登録や操縦者登録と確認を行っておきましょう。
また、必要書類をすべて揃えておくこと、包括申請でOKな飛行かどうかを確認しておくこと、保険に加入し番号を手元に用意しておくことなどが必要です。
特定飛行を行うにも関わらず、許可申請を出さずに飛ばすと最大50万円の罰金が科せられる可能性があります。
最初の飛行許可申請は少々面倒かもしれませんが、期限が切れる40開庁日前から10開庁日前まで更新手続きが可能です。
更新は、申請内容に変更がなく、期限が切れる前に限られます。
更新する場合は、タイミングを逃さないように気をつけましょう。
ドローンを飛ばすための申請は複雑なため、慣れるまでは難しく感じると思います。以下の記事でも詳しくご紹介していますので合わせてお読みください。